【1】ダグ・ハリントン
あなたはダグ・ハリントンを知っていますか?
AmazonCEOの彼は、ヘッドハント経営者ではありません。日本で言えばトヨタの豊田章男社長と同様、たたき上げでAmazonに17年間在席してCEOになった、Amazonの歴史と現在を知り尽くした経営者です。
おそらくそのダグ・ハリントンの生の声を一般の人が聞ける年1回のチャンス、AmazonECサミット2022が、10月12~13日に開催されました。
各部門の責任者が、Amazonの各事業の現状レポートと利用メリットについて直接紹介し、販売者としての有効活用のコツなどに至るまで2日間にわたって、30のセッションに分けて配信されました。
このECサミット開催を受けて、きょうは、巨大通販Amazonを少し、のぞき見てみましょう。
【2】Amazon販売の伸び
2021年1年間で売上15%増加。通販利用売上年間1位(2位は僅差で楽天市場)。
のべ年間に世界で3億人、日本で5200万人がAmazonから商品購入。
Amazonは2000年当初、自社販売品が100%。その後登録販売登録販売者(セラー)による販売が伸び、2015年に50%を越えて逆転。2022年現在は、全世界で登録セラーが200万アカウントを越えて、60%がセラー売り上げとなっています。
【3】「Amazonブランド登録」
商標権を持っている販売者が「無料」で登録できる特別サービス。
商品販売とは別に、ホームページスタイルの「ブランドページ」を所有できます。Amazonの商品掲載ではできないビデオの活用も可能で、ブランドの商品コンセプトや特長などを存分に紹介できます。ブランド一覧からも個々の商品表示した際の商品名のすぐ下の表示からもリンクして表示され、またブランド内の全商品が表示されるため、販売実績が飛躍的に伸びます。
Amazonセラーセントラル(販売登録済みメンバーの操作ページ)の中に、IPアクセラレーターと呼ばれる数社の提携特許事務所につなぐページがあり、独自商品を展開している企業が、特許庁へ商標出願することから、Amazonブランド登録を行うまで一括して有償サポートをしてくれます。
ブランド登録して販売を行うと、ブランド売り上げの5%がセラーに還元される。
最大550万円分の還元。これを販促費用に充てることでさらに販売拡大に活かしてもらおうという取り組みです。
ブランド所有者の販売実績は、2021年新規出品者では10%、Amazon全体売り上げ構成では40%にのぼります。
Amazonには新規出品者広告特典というのがあり、すべてのセラーが上位表示を競うスポンサープロダクツ広告において、上位に表示される期間があります。しかしブランド所有者は、このほかにも様々な販促機能を使えるため、初年度から売上成果を大きく伸ばすことができます。
【4】スポンサー広告
プロダクト広告、ブランド広告、ディスプレイ広告
キーワードや関連商品に関連して表示されるしくみです。
閲覧者クリック数で費用がかかる仕組みなので予算を立てて利用できるメリットがあります。
【5】クーポン・タイムセール
2018年から、タイムセール祭りの開催を開始。検索結果の左上にオレンジ色のマークが出て購入率がアップし、宣伝力即販売という効果が出ることで販売者の皆さまに大きな成果を出していただいています。クーポンは、期間や予算を自由に設定できます。
本年8月実施分では、2018年の4倍以上のセラー(販売者)参加を得て盛大に実施できました。対象商品には、最大15%のポイント還元が行われます。
【6】ビジネスレポートの活用
商品単位で、閲覧や購入経過のレポートを表示できます。広告前と広告中などを比較してABテストと同様、常に活用することが、成果を上げるために非常に重要です。Amazonはページ閲覧データから販売実績、収支計算に至るまで、一覧表示や解析グラフなどを、好きな期間設定でいつでも表示できるエンジンを搭載しており、セラー自身が収支計算等について統計学的な手間を一切かける必要がありません。
【7】SNSサービス
公式Twitterアカウントのほか、2021年からはLINE公式アカウントも開設し、販売者支援、重要情報やアドバイス配信を行っています。
【8】Amazonプライムデーの大成功
今年からプライムデーにおいて、「日本の中小企業」というバッジ表示ができるようになり、売上が飛躍的に伸びました。今年は7月12,13日に開催。対象商品の販売成果1400万品という大盛況でした。
【9】販売者向け新サービス続々
セラーが利用できる閲覧実績や販売実績のレポート機能を強化し、2022年3月から、閲覧検索者の足跡が解析できる新サービスを開始。2023年からはメール配信を組み合わせた販促活動の実施が可能になる新サービスがスタートします(istyleとの業務提携)。AI強化も引き続き重点を置いており、関連検索によるお勧め表示を進化させています。
【10】販促だけでなく販売企業の権利や知的財産保護にも注力
2021年にAmazon販売の知的財産保護のために9億ドルを投資しました。個々の販売起業が自社だけで、不正コピーや模倣を完全に防ぐには莫大な投資が必要です。Amazonセラーとして登録し、販売を行うことで、Amazonが行っている様々な集客対策、安全確保に至る様々なメリットをあなた自身のものとして活用できます。
【11】Amazon倉庫
Amazonは、ストック、管理、販売時の発送までを一括して行うAmazon倉庫(旧FBA倉庫)の整備を進め、現在、日本全国で20箇所以上のFBA倉庫、45箇所のデリバリーステーションを稼働しており、現在、18箇所を追加整備中です。すでに日本でも8万社以上の販売者がFBA倉庫を利用しています。
販売者にとっては、FBA利用によって平均30%のコストダウンが実現しています。これはAmazonパートナーキャリア(従来オフィシャルキャリアは郵便・日通グループでしたが、2021年からヤマトホールディングスと本格提携)との物流改革によって、スピードとともに、圧倒的なコストダウン(送料実費の値下げ)を図ることに成功したためです。
このシステムによって、Amazonでは、当日配送対象商品が、現在700万点以上に達しています。
Amazonは現在21カ国でECサイト運営を行っており、越境購入も可能にしていることから、200以上の国と地域に商品を届けています。
2022年3月からは、日本で出品している商品を、同時に世界販売が行えるようになりました。自動翻訳機能によって、別出品が不要になり、海外では、現地言語に翻訳された商品説明が表示されています。
【12】ECサミット2022のまとめ
ここまで、Amazonについて、しくみやデータ紹介を中心にレポートしてみました。ECサミットでは、Amazon販売をより促進するために、どのように取り組んだら良いかの詳しい案内も満載され、ここで紹介した数十倍の情報が一気に30ものセッションに分かれて配信されました。しかしその大半は、すでにセラー登録した販売者に向けてのアドバイスであり、一般的な内容ではありません。
読者のあなたには、この世界最大の通販を少しのぞき見できたことで、お役に立てたのではないかと思います。