バリューラダー(2)


さて、バリューラダーの本質や、本格的な構築手順についてお話しするまえに、もう一度脱線しましょう。あなたの理解を大きく助けるはずです。
 
○マクドナルドではカーブを描いたノークッションの椅子
○スターバックスでは足載せにもなる横バーつきの高い椅子
○ジョナサンではクッションつき長椅子
○多くのカウンターラーメンでは薄クッションの丸椅子
○喫茶室ルノアールでは低い座位の深めのクッション椅子
 
が、それぞれ主に採用されていること。あなたは上記の内、2つ以上はご存じではないでしょうか。
 
ファーストフードチェーンでは、お客様の回転数を稼ぐ、つまり滞留時間を短くすることが売上に必須で、このため、クッションチェアは適さないとされています。商品の安さ、速さ、手軽さで売る上で、「長時間くつろいで頂く価値」は、排除したわけです。
 
ルノアールなど、ビジネス商談にもよく使われる高級喫茶では、腰を据えて長時間居ても疲れないソファが採用され、また、座席間の距離を空けて、来店客が気兼ねなく対話できるようにしています。
 
中には、たとえば新宿紀伊國屋書店でお気に入りの本を見つけては、帰りに近くのルノアールでじっくり読むことを習慣にしている個人客もみられます。
 
つまりお店の側は、610円(2022年現在)という珈琲の値段だけで判断する顧客を、そもそもターゲットにしていません。来店客は、そのスペースを「短時間レンタル」するつもりで利用しています。安心のスペースを都心で短時間レンタルすることを考えたら、610円は充分安く感じる価格です。
 
顧客にどんな価値提供をするのか
 
ということを、究極まで考え抜いて、店の空間利用、壁紙やカーペットの色と品質、座席の選定、テーブルの広さや高さまで、まさに「最適のお膳立て」がなされてこそ、独自のビジネス成功を導くことができるわけです。
 
余談ですが、わたし自身が、急成長期に入ったばかりの「ジョナサン」に1980年代初頭にアルバイトスタッフをしていた当時、「なぜジョナサンのテーブルが他のレストランチェーン等に比べて若干高めかつ広めに設定してあるのか」について、座ったり立ったり食べたり肘の使われ方などまで、実演を含め、このことだけで10分以上、研修を受けて理解する機会がありました。
 
椅子選び
 
が、今もわたしが飲食店アドバイスの際、重点のひとつに位置づけて綿密に調査しているのは、このようなルーツが影響しています。
 
少し余談ですが、マクドナルドでは、来店客のモバイル利用が増加しはじめた2007年ごろから、電源ソケット席を多数の店舗で普及させた時期があります。

飲食店の顧客サービスで度々検討課題となる「電源の提供」

電源論議は飲食業界で、今も話題沸騰ですが、ファーストフード店においては、放課後の中高生が待ち合わせて長時間滞留する現象がみられ、いったんサービス提供したものの、その後電源ソケットを閉鎖した店舗が多数出現しました(注:最近は店内デザインの変更によりエリア分担型で、再び電源復活が進んでいます)。
 
「学校で充電できずケータイの充電残が気になる中高生が午後には街に出てくる」
 
という事情まで見据えることができていたら、それに合わせて設備計画もできたでしょうし、反対に、午後の中高生の利用を掴む何らかのサービスに、プラスに使えるかも知れません。
 
実は飲食店の開店を考える際に、座席にまったくこだわらずに大成功した別のチェーンも存在します。それは、類似業態の閉店後の物件だけを利用し「居抜きテナント」だけ専門に場所を決めて、低コスト開店に特化したビジネスです。
 
達成したい目的に対して、もっとも早く、効率的に開店を行う。それが自分自身の事業予算総額の中で考えると、どのような手順になるのが良いのか。
 
バリューラダー。つまり究極の目的から遡って、自分の歩みを設計することの大事さに、おそらくあなたも改めて気づくことと思います。
 
さて、本質の話をお読みになる心の準備、あなたは整いましたか?
(つづく)

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