オーガニックの真髄 (1)


冒頭にお伝えしておきましょう。この大きな課題を解決するために、わたしは、動かすことのできない、どちらも欠かすことのできない、絶対的な「2つの答え」を持っています。

この答えについて、シリーズの中であなたにお伝えしていくわけですが、少しだけ予備知識として、これから紹介する前提のお話に、お付き合いくださればありがたいです。

(1)様々な「オーガニック」

農産物としてのオーガニック(有機農法及びその生産品)については、国によって様々に異なる定義があり、基準もまったく異なります。たとえばベルギーでオーガニック認証を受けても、中身によってはフランスではオーガニックマークの表示ができない場合がある、というふうに、EU諸国内でも、基準は異なります。

まず最初に知っていただきたいのは、日本で定めるオーガニック(有機農法)とは、必ずしも「無農薬」ではない、ということです。つまり「有機野菜」「オーガニック野菜」と呼ばれて売られているものにも、農薬は使われるということです。以下、まず国の基準を見てみましょう。

「有機JAS認証」における有害動植物の防除の基準

  • 病害虫防除に化学的に合成された農薬に頼らず、耕種的防除、物理的防除、生物的防除、又はこれらの手段を組み合わせた防除を行うことを基本とすること。
  • ただし農産物に重大な損害が生ずる危険が急迫し、これらの方法では有害動植物を効果的に防除することができない場合は、有機JASに許容される農薬に限り、使用が認められている。
引用元:マイナビ農業 https://agri.mynavi.jp/2021_09_01_168466/
(2)では、「無農薬」の方が優れているのか?

無農薬の方が、有機農法よりもハードルが高いから優れている、という考え方の方々もおられます。しかし無農薬で生産されている、という場合も、その中身によっては必ずしも奨励しきれないものもあります。

世界的に、毒ガスによる殺菌は大気汚染防止の観点から大幅に制限される方向に進んでいますが、たとえば旧来型のハウス小松菜栽培のように、酸化エチレンと臭化メチルの混合ガス(燻蒸ガス)など、植え付け前の土を毒ガスを地中に通して殺菌しておいて、そのガスが短期間で蒸散して飛び去ったあとに植え付けて無農薬生産する、という農法も行われてきました。閉鎖ハウスであれば「虫」は防ぎやすいので、黄斑病などのウィルス性疾病、黒星病などの不完全菌(カビ類の一系統)感染症などが防げさえすれば、育成中の「無農薬」が達成しやすいわけです。

ハウス栽培での小松菜の年間量産の場合、ひとつのハウスで年間に12回転、13回転というスピード出荷を行う効率生産のために、収穫後に次の植え付けを行う前の圃場管理時に使う燻蒸ガスは非常に便利です。ですが、作物自体に農薬を使わなくても、環境汚染型農業には違いありません。消費者側の風潮が「安全性」のみに偏重し過ぎると、直接関係しないところでの汚染や環境破壊を助長してしまうことがあるのを、知っておくことをお勧めしています。

(3)循環型農業の神髄

このあとの当サイトのブログ記事では、本来のオーガニック農業や循環型農業の神髄につながる話題に触れようか、と考えています。その中で、わたしが冒頭に申し上げた、「絶対的に必要なはずの2つの答え」をお伝えしようと考えています。

さて、その前に、巷では。

「有機農業を進めています」

「農薬を抑えて生産しています」

聞き飽きるほど、主張の競争社会になっていますが、ホンモノがとても少ないことを、あなたはご存じでしょうか。

それは、「必要なはずのふたつの答え」を実践している生産者が日本では極めて少ないから、なのですが、まずはその前に、エネルギー面の問題も整理しておきましょう。

理想は、太陽のエネルギーを燦々と浴びる季節の路地生産において、有機、さらに無農薬農業が推進できれば良いのですが、従来農業の延長線上では、実は困難です。

あくまでも優先順位は、

1:「路地」で、「すばらしい土壌」で、野菜や草花がなるべく育つことを目指し、どうしても条件が揃わなければ、

2:カバーをかけ保護した上で太陽エネルギーで生産し、それでも叶わない場合は、

3:ハウスを利用して、できる限り省エネで生産し、その中で、水耕栽培とか植物工場とかも検討する

としておきたいところです。

「え、水耕栽培とか植物工場が最先端ではないの?」

とお感じの方もおられることでしょう。はい、そのとおり、少なくとも現状では優先順位は低くしておく必要があります。

まずここをクリアしておきましょう。

(4)現在は水素社会前夜時代

世界のエネルギーはまだ現在、完全水素化されていません。つまり、エネルギーを使うと、少なくともその一部または大半は、石油エネルギーや原子力に依存していることになります。つまりエネルギー面で高コスト農業である植物工場や水耕栽培は、付加価値作物の領域では採算性の点で成り立つ組合せが多数あるものの、地球を持続可能に導く優先度から見ると、低い、ということになります。

日本では、新電力会社のトップ企業である、株式会社イーレックス(東証一部上場:9517)と契約すると、全国どこでも、バイオマス発電によるカーボンニュートラル電力を選択して利用できるようになりました。

カーボンニュートラル(地球上の収支として新たなCO2排出をしないエネルギー利用)は、当面目指すべき中間ステップとしてとても重要ですが、これはまだ残念ながら例外的な選択肢で、イーレックスは積極的ですが、世界中でまだまだ普及する段階にはありません。

そして最終的には、そもそもCO2の排出を精製過程でも一切発生しない「グリーン水素」※で発電も賄われるようにならない限り、エネルギー使用の多い農法や生産技術は、本格的なサステイナビリティー(SDGs)の視点でスコアを低く評価されてしまう時代が、間もなくやってこようとしています。

少し脱線しますが、もし、安い水素エネルギーが出現して普及すると、漁業・水産業の時代がやってきます。漁業資源は、それ単独では太陽エネルギーを原動力とした巨大な生態系資源であり、目下、漁業経営最大の圧迫要因となっている石油価格の問題が解消され、さらに、グリーン水素でエンジンが動く時代になると、今の社会とは正反対に、持続的な資源管理をきっちり行った漁業が、サステイナブルな第一次産業のトップ評価に逆転する時代がくると私は予想しています。

間もなく来るであろう「水素時代」を見据えた話題はまた改めてその機会を設けることとして、今回はまず、「土から得る生産活動」に焦点を絞って、さらに掘り下げていこうと思います。

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