【4】投資判断について
(1) 分散投資
土地投資などでは、利益率は低くても確実性が高い、つまり低リスクな投資が可能です。一方、金融投資では一般に利益率は高くても、相場の逆走リスクが常にある程度あり、損失リスクがあります。また、世の中には予想外の変化が訪れることがあります。決してひとつの案件に全力投球することのないよう、投資は次第に少しずつ複数の分野を建てていくようにして、リスク分散を図るのが王道です。
(2) 新時代を謳う案件
次回お話しする「投資しない条件判断」にも関連しますが、投資勧誘案件の中には、新時代の到来を謳い、まだ広まっていない内に投資するのがチャンスで利益が大きい、というふうに案内される例が多く見られます。しかし内容が、ほんとうに「先行者メリット」を得られるものかは、慎重に判断する必要があります。
例1:DeFi(Decentralized Finance)案件
「ブロックチェーン」を利用し、「スマートコントラクト機能」を使って(このふたつは次回の巻末に解説を載せます)、金融機関などを通さずに個人間で取引を可能にする仕組みがDeFiです。最近は、この巨大プラットホームが出来上がると謳った投資案件が出てきています。
例2:NFT(Non-Fungible Token)案件
「ブロックチェーン」上のデータが改ざん困難であることを利用し、デジタル資産に簡単にIDを付与してコピー不能な価値を与えたり、転売された場合に原作者に一定の手数料が入るように予め設定を付与できる機能です。利用範囲は広く、アート作品から、ゲーム内コインやアイテムに至るまでNFTの利用による確固たる価値付け利用が急速に進んでいます。このNFTに関係する投資案件も出現しています。
確かに、次々に世の中には新技術が出現し、そこに投資しておくと良いように感じられるものは多々あるのですが、そこにほんとうに「先行者利益」があるかどうかは慎重に判断する必要があります。
たとえばDeFiのプラットホームをベンチャー企業がつくったとしても、あとから後発隊として、大手取引所や上場企業が、自由取引のできるDeFi市場を作り始めたりすれば、大半のシェアはそうした力のある企業に奪われてしまうかも知れません。実際に、日本でもGMOやビットバンクなどがDeFiプラットホームサービスを始め、人気を博しています。
またNFTの世界はさらに普及が急速に進んでいます。国際的に人気を博しているOpenSeaやMagic Edenのほか、国内でもCoincheck NFTマーケットプレイスなど、大手企業が、簡単にNFT作品をつくって売ることも、購入することもサービスやサポートを開始しています。また、アプリも次々に出現しています。
(3) 今じゃないでしょ
集客による資金集めに熱心な投資案件では、「本日動画を見た方当日限り」「期間限定」「募集人数限定」などなど、あらゆる煽り言葉をつかって、その場でのメンバー登録や送金を迫るものが多く見受けられます。
またとないチャンスだと思ってしまうあまり、無理に出費してしまう方も多数おられるのですが、ほんとうにまたとないチャンスなのか、立ち止まるべきです。
「あなたはこの情報に出会えた数少ない貴重な幸運者です」とまで言い放って煽るページも多数あります。そんなに数少ない幸運者だというのがほんとうに真実なら、数々宣伝されている案件を覗き込んだだけで、1年間に、この同じ言葉に何度も頻繁に出くわすこと自体が不思議です。
そうした情報に接したとき、「もしかしたら自分に幸運がやってきたのかも知れない」と、分析もせずに安易に思わないことが大事です。ほんとうに幸運なのなら、この話に出会う前の日に、別の臨時収入が突如舞い込むなどの資金面の幸運も伴うはずだ、と考えてみるのも良いかも知れません。
18世紀にロスチャイルド家が貸金業を本格化したのが近代金融のスタートであるとよく言われていますが、それよりずっと前の15世紀には、「銅」の予約取引が開始され、実に中世以降数百年にわたって、お金を殖やす投資は、絶え間なく続いてきたわけです。ほんとうにきょう出会ったチャンスが1回限りで、来年になったら、もう良い投資や利殖方法が消滅する、などと、600年余りに及ぶ金融投資などまですべて明日消えるようなことは、考えがたいことです。
まずゆとりの資金をつくって、その時に最適な投資を検討するのが賢明ではないでしょうか。
(4)自己資金づくり
そもそもゆとり資金がない、という場合、むしろ心理的には最も危険な状態に置かれやすいものです。「今日限りのチャンス」と言われた際に、心が動いて無理な投資入金をしてしまうかも知れないからです。
収入がゼロの場合は別として、何かしらの収入がある場合、投資を開始する少額の自己資金をつくることは実は難しくありません。
それは、断捨離と節約です。
サプリメントなどの健康食品から、情報の定期購読に至るまで、最近定着している「サブスクリプション方式」という、月々定額の支払いを続けているものに、何と何があるか、また、どうしても今欠かさず必要なものか、点検してみるのも良いでしょう。健康食品などの場合は退会しなくても「一時休止」が申し込めるものもあります。
不要品とは自分で思っていなくても、改めて点検して実は使わなくなっているものをピックアップして、フリマサイトで売る、などの断捨離。そして消費を減らす節約。このふたつでお金は自分自身から生まれてきます。
家で料理をする方の場合、きょうはカレー、とか、肉じゃが、などと夕飯の内容を決めてから材料を買い物するのをしばらく停止して、スーパーで値引きのものを組み合わせて夕食をつくる、レシピ後出し型の買い物に切り替えるだけでも、買い物代金はかなり減らせます。
もしも1日100円だったとしても、年間で36500円の余剰資金が生まれます。多くの方は、1日に200~400円程度のお金を生み出すことが可能なことが多く、そうなると1万円の自由なお金を手にするのに1ヶ月かからないこともあるわけです。
その1万円からスタートできることから始めるもの良いし、しばらく貯めて5万円あればできる投資から開始しても良いと思います。まず大切な自分の資金を編み出すことで、自然と、情報をよく吟味するようになる心理的なメリットも得られます。
もしお金持ちになってしまったら、たとえば1億円を得た際に、なにか面倒なことがあれば100万円くらいなら人に依頼して解決しようとするかも知れません。資金がない内の方が、一生の財産になる「自己点検」の向上には最適な時期になります。それこそが、まず最初の貴重な財産だと思います。